「1時間で世界を救うなら、55分は問題を定義する」
人生や仕事でトラブルが起きたとき、つい「どうすれば直るか」から考え始めていませんか。しかし、解決策を考える前に、もっと時間をかけるべきことがあります。それが「そもそも何が問題なのか」を決める、問題定義です。
この記事では、問題解決の場面でよく引用される名言をきっかけに、問題定義がなぜ大切なのかを確認します。そのうえで、明日から使える4つの問いかけを紹介します。
アインシュタインの名言とされる言葉
問題解決の話になると、よく引用される言葉があります。たとえば、次の一節です。
「もし世界を救うのに1時間しかないとしたら、55分を問題の定義に使い、残りの5分で解決策を考える」
この一節は、アインシュタインの言葉として広く知られています。しかし、本人が言ったことを示す確かな記録は見つかっていません。実際、プリンストン大学出版局の名言集『The Ultimate Quotable Einstein』にも収録されていません。
一方、名言の出典を調べるサイト「Quote Investigator」によれば、この言葉は次のように形を変えてきたようです。
| 年 | 誰の言葉として紹介されたか | 内容 |
|---|---|---|
| 1945年 | 数学者ロバート・J・エイリー(Robert J. Aley) | 1時間で問題を解くなら、最初の50分は問題を読み、研究することに使う |
| 1966年 | イェール大学の工学系の教授(氏名不明) | 1時間のうち最大3分の2を、問題が何かを定義することに使う |
| 1973年 | アインシュタイン(初出) | 40分を研究、15分を見直し、5分を解決に使う |
| 1986年 | アインシュタイン | 55分を問題の定義、5分を解決に使う |
| 1995年 | アインシュタイン | 「世界を救う」という設定が加わり、現在よく知られる形に |
なお、1945年の資料は、ミシガン大学の教育学の教授ジョージ・E・キャロザース(George E. Carrothers)が、エイリーの言葉として紹介したものです。
結局、誰が言ったのかははっきりしません。それでも80年以上、形を変えながら語り継がれてきたのは、多くの人が「確かにそうだ」と実感してきたからでしょう。
なぜ「問題定義」がそんなに大事なのか
結論から言うと、問題の定義が解決策の方向を決めるからです。ここからは、その理由を3つに分けて説明します。
1. 間違った問題を解いても、何も解決しない
たとえば、「Webサイトのアクセスが少ない」という相談を考えてみましょう。このとき、「SNSで宣伝しよう」「広告を出そう」と、すぐに解決策へ飛びつきがちです。
しかし、本当の問題は何でしょうか。
- そもそも検索で見つかっていない(集客の問題)
- 訪問はあるが、すぐに離脱している(中身や導線の問題)
- アクセスは足りているが、問い合わせにつながらない(ゴール設定の問題)
このように、どれが本当の問題かによって、やるべきことはまったく違います。そのため、定義を間違えたまま全力で走ると、時間もお金も間違った方向に使われてしまいます。
就職活動においても同様です。研修を実施するとよくこのような質問を受けます。
「このソフトの使い方を覚えたら就職できますか?」
「プログラムがわかれば給料が上がりますか?」
と。私もそんな時期がありましたが、これは【問題解決】を先にしてしまっているので結果いいことにならないことが多いです。「じゃあどうしたらよいの?」がまずは問題をしっかり定義することです。
2. 問題が正しく定義できれば、答えは半分見えている
「問題を正しく言葉にできれば、半分は解決したようなもの」とよく言われます。何を解くべきかがはっきりすれば、調べること、試すこと、協力をお願いする人が自然と絞られます。
つまり、最後の「5分」が短くて済むのは、それまでの55分があるからです。
3. 関係者の認識がそろう
さらに、チームの仕事では、人によって「問題」の捉え方がずれていることがよくあります。そこで、定義の段階で「私たちが解きたいのはこれだ」と言葉にしてすり合わせます。そうすれば、あとで「そういう意味じゃなかった」という手戻りを防げます。
問題定義のための4つの問いかけ
では、55分を何に使えばよいのでしょうか。ここからは、すぐに使える4つの問いかけを、考える順番に沿って紹介します。
1. 理想はどういう状態か?
まず、問題とは「理想」と「現状」の差だと考えます。そのため、どうなっていれば満足なのか、目指す状態をはっきりさせます。
2. 現状は事実としてどうなっているか?
次に、「なんとなく少ない」ではなく、数字や具体的な出来事で現状を把握します。このように、感覚ではなく事実で見ると、理想との差を測れるようになります。
3. なぜその差が生まれているのか?
続いて、「なぜ?」を何度か繰り返して、表面的な症状ではなく原因を探ります。
4. 本当に解くべきなのはどれか?
最後に、原因がいくつもあるときは、影響が大きく、自分たちで手を打てるものから選びます。
そして、この4つは頭の中だけで考えず、紙に書き出してみてください。言葉にして可視化するだけでも、考えるべき解決策が明確になり、質も大きく変わります。
解決策に飛びつきたくなったら
ここまでの流れが分かっていても、問題を前にすると、早く解決策を決めたくなるものです。なぜなら、「分からない状態」のまま考え続けるのは落ち着かず、答えを決めると安心できるからです。
だからこそ、すぐに答えを出したくなったときが、立ち止まるタイミングです。そんなときは、「今、自分はどの問題を解こうとしているんだろう?」と、一度だけ自分に問いかけてみてください。
仕事だけでなく人生においても身の回りにある問題はたくさんありますよね?
- お金がない
- 人間関係がうまくいかない
- 仕事が楽しくない
これらの裏に隠れている問題に時間をかけて考えることで解決に近づきます。「なぜなせ分析」もおすすめなのでこれについてはまた改めて記事にしたいと思います。
まとめ
- 「55分で問題を定義し、5分で解決する」という言葉は、アインシュタインのものかは分からないが、80年以上語り継がれてきた
- 間違った問題を解いても、何も解決しない
- 問題を正しく定義できれば、解決策は自然に絞られる
- 「理想・現状・原因・優先順位」の4つの問いかけで、問題定義を習慣にしよう
最終的に大切なのは、誰の言葉かを確定することではなく、この考え方を次の仕事で使ってみることです。問題にぶつかったら、まずは「5分」の解決策ではなく、「55分」の問題定義から始めてみてください。

